悠久のひととき

謎解きを制作するのもまた旅人なり。編集後記。『謎解きで朝食を』の謎解きをどのように作ったのかを振り返ります。制作時の方針、難易度設定、開催後のウラ話等をまとめました!

はじめに

この記事ではこちらの謎解きを実装するまでを、作成者の目線で振り返ります。なお、「私の謎解きの作り方」であるため、他の作成者様も同じであるとは限りません。一人ひとり、考え方は違うものです。
なお、ここは『謎解きで朝食を』のネタバレ全開です。実際にプレイしてみたい方は、こちらからどうぞ。

解いてみた動画

チャーリーとNOZが挑戦した動画はこちら!

やりたかったこと

カヌレが食べたかった。

「謎解きで朝食を」状況

作成時の方針

前提条件

まず、前提条件=やりたいことを列挙します。

前提条件:「カヌレ」を使う。

誰のために作るのか。それは自分のためです。アマイモンは世界を救う。

制限

次に制限=絶対に厳守することを列挙します。

制限①:1時間以内で出来ること
制限②:スタッフは私のみ
制限③:制作時間が数時間しかない!

シン制限

ここでアップデートします(このことを、制限をより深く、新規に設定することから「シン制限」と勝手に私は言っています)。シン制限は、前提条件と制限にスタッフの特長(趣味/特技)を加味して、具体的に設定します。

前提条件:「カヌレ」を使う。 + 制限①:1時間以内で出来ること
⇒シン制限①:制限時間を991秒に設定し、さりげなくカヌレを登場させる。

制限②:スタッフは私のみ + 制限③:制作時間が数時間しかない!
⇒シン制限②:チェッカー(チェックポイントで回答が合っているか確認する役割を持つ人物)は無し。ウェブサイトでのパスコード入力により、自動化する。

まとめると、
シン制限①:制限時間を991秒に設定し、さりげなくカヌレを登場させる。
シン制限②:チェッカー(チェックポイントで回答が合っているか確認する役割を持つ人物)は無し。ウェブサイトでのパスコード入力により、自動化する。

謎解きの制作

シン制限」の範囲内で、謎解きのストーリーを作成します。ここは思いつきです。

大枠 ―思いつきの書き出し

前回の謎解き では、テーブルの上に謎解きとは関係のないお菓子や飲み物が散乱しており、カオスな状況でした。今回は関係のないものはテーブルの上に置きたくないなぁ。
カヌレだけだと喉乾くから、ペットボトルのお水でも用意しとこう。

大枠を具体化する

3月、ホワイトデーのギフト探しにお出掛け。そこでとあるチョコレートを発見。
サルディーヌ(sardine)。イワシの形をしたチョコレート。すかさず、「なんで?」と店員さんに聞く。

店員さん: 「フランス語でのことをポアソンというのですが、フランスではエイプリルフールのことを『ポアソンダブリル』、つまり『4月の』というんです。そこで、パティシエの感性・ユーモアでの形のチョコレートをこの時期に展開しています。」

おもろ。
ここで、ヒョコっと発想が生まれた。

のことをフランス語でPOISSON(ポアソン)という。そして使いたかったカヌレフランスのお菓子。
よし、POISSON1st stepの答えにしよう。POISSONって、アルファベット表記がポイズン(POISON)と似てるよね。ポイズンという意味。、どちらも漢字1文字だ。これはフェイクの答えとして使えそう。あの有名な歌もあるし。言いたいことも言えない世の中じゃ。

裏テーマとしてフランスを共通点にしてみようかな。となると、欲しいのはフランス語由来で、有名な飲み物。
カフェオレ(café au lait)か!? 「lait」は牛乳という意味。もちろんフランス語。これで、登場させるものは決まった。

具現化 ―小謎~ギミックの作成

まずは991秒カウントダウンタイマーをつくろう。中身は超シンプル。BGMは無し。300秒、200秒、100秒、60秒でちょっとした効果音。60秒からは1秒毎の少し焦らせる効果音を入れました。みんなも使ってね!

チェッカーが人力(じんりき)では無理なので、入力フォーム(正誤判定フォーム)を用意しよう。「ティーポッド式」で日本語にも対応させようか。

今回は問題数を少なく。そして制作時間があまりないので、過去につくった謎解き を使いまわそう。
1st stepの答えをPOSSIONとしたので、必要な文字は「P」「O」「S」「I」「N」のアルファベット5文字。何回も登場させてしまおう。最初の謎解きの答えは「WHITE」、「STAR」「NIGHT」、「STRIPE」にすれば過去につくった謎解き を使いまわせる!

?????:「ずるいぞ!新作じゃないぞ!嘘つきだ!」
ふかちゃん:「エイプリルフールだから!ゆるして!」 (つくったの、4月下旬だけど)

そろそろラス謎(ラストの謎解き=最終問題・・・大謎)をつくらないと。どうしよう。カヌレカフェオレ、どちらもカで始まりレで終わる
しりとりしよう。そうしよう。

では最初の導入(オープニングアクト)でしりとりの謎解きを出そう。そしてラス謎にもしりとりを。

ちゃっかりと、悠久のひとときのグッズ を登場させよう。せっかくつくったし。
「セット」とは「悠久のひとときのタンブラー 🥃に置くこと」と定義しよう。

「新幹線」って入力すると絵文字で「🚅」と出てくるけど、海外に「新幹線」ってあるの!?
調べたところ、英語表記では「bullet train」。

ちなみに、今回の謎では私が間違えて、「高速鉄道」(high-speed train)の絵文字🚄を使って、「シンカンセン」を表してしまった。申し訳ない。

「新幹線」って、よくよく考えると珍しい名前ですよね。
って思ったときは、「商標登録」されているかの確認をオススメする。もし商用利用しようと考えている場合の話だが。
結論だけ言うと、「新幹線」は商標登録されている。
「区分」(商標登録のカテゴリ)にも注目した方がいいかも。個人的には「第9類」「第35類」「第41類」「第42類」をチェックしている。

もうひとひねり。そもそも前回の謎解き では、お菓子や飲み物が散乱していた。じゃあ今回はお菓子と飲み物を食べて飲んでもらおう。
つまり、ラス謎は「最後の答えを当てさせないようにカヌレカフェオレを食べて飲んでもらうこと」にしよう。ラス謎の雰囲気を出すために、少し意地悪してカフェオレをミルクとコーヒーに分けよう
そうすると、カフェオレの定義をどこかに載せなければ。ちょうどPOISSONの意味も載せないといけなかったから、辞典風に作ろうか。
そして、この辞書にも目を通してもらえるように読み込むべき二次元コードと「O」も入れちゃおう。

ラス謎は、「未来のNOZからのメッセージ」にしよう。すこし不思議(Sukoshi Fushigi; SF)な体験をしてもらおう。
ということで、NOZの手書きフォントを作っちゃおう!

手書きでひらがなを書くだけで簡単にフォントが作成できる!(ひらがな しか書いてないのに、ひらがな、カタカナ、アルファベットもつくってくれちゃう!すげぇ!)

ちなみに、メッセージの外枠に「コーヒー☕」と「ミルク🥛」を「混ぜる🫗」と「別の飲み物🥤」となるような絵文字を配置している。さりげないヒント。というか、気づかないかも。。。
このヒントをさりげなく出すために、他の謎解きたちの外枠(☕, 🥛, ✨)にも絵文字を配置している。外枠が同じものを組み合わせると1つの謎解きになるようにしている。もっというと、最初の問題では外枠をすべて絵文字を使って派手にしている。外枠を見てもらいたい、というせめてものアピールだ。

さて、できました!

絵文字の著作権ってどこが保有しているのか?

絵文字は、Unicode(ユニコード)で決まっている文字コードを入れると、表示されるのだが、じつはベンダー(Google, Microsoft, Apple, Twitter, ...)ごとに、出力される絵文字のデザインは違う。
今回の場合はMicrosoftのものを使用している。
絵文字を使用する場合は、各ベンダーのルールに従おう。
ちなみにAppleは厳しい。

何も気にしたくなければ、みんな、絵を描こうということだ。

難易度の設定

今回の謎解きの流れとしては下記の通り。
①オープニングアクト: カヌレカフェオレの材料(ミルク🥛とコーヒー☕)の登場 → 悠久のひとときのジェットキャップ 🧢の登場 → 最初の問題に挑戦 → 爆弾発見
②本編[爆弾解除]: 1st stepラス謎(最後の問題に挑戦)
③エンディング: 最終回答チェック(カヌレカフェオレが無くなっているか?)

オープニングアクトでは、カヌレカフェオレがいきなり食べて飲まれることを防ぐため、矢継ぎ早に帽子🧢を紹介している。カヌレとカフェオレの登場による驚きに対して、より大きい驚きがないとカヌレとカフェオレが食べ飲まれてしまうであろう。そのために限定グッズの帽子🧢(数千円)を用意した。このように、ウソをつくと高くつくのでお気をつけて。
また、最初の問題の難易度はかなり上げた。

当初の予定では左側の画像の紫色の部分(「しりとりしよう」)を入れていたのだが、最初の問題は特に制限時間を設定していないこと、またしりとりの要素を強く記憶に残してもらいたいので、あえて記載を消した。もしここで、あまりにも謎を解くのに時間がかかっていた場合はヒントを出すことにした。会話・議論した方が記憶に残りやすいと考えたためだ。英単語を覚えるときに文字だけではなく、聞いたり言ったりした方が覚えが早いと思わない?そんなことないかも?

本編では、1st stepの謎の難易度調整にめちゃめちゃ悩んだ。まず、アルファベットを答えにしてよいのかどうか。これまでのチャーリーとNOZを見ている限り、5文字程度の簡単な英単語であればスペルも意味も分かるかなという想定のもとで、答えを「WHITE」「STAR」「NIGHT」「STRIPE」とした。また、全ての謎を英単語の意味を知らなくても、アルファベットがわかれば解けるものにした。すべて形を読み取ればアルファベットが出てくるという仕組みだ。これがどうなったかは本編 を観るとわかります。。

一方で、各謎に指示文を入れるべきかを悩んだ。最終的に、指示文を入れるとさすがに制限時間991秒も使わないのではないかと判断し、すべての謎において指示文を抜くことにした。ただし、少なくとも四角の枠のなかにはアルファベットが入るということを認識してもらうために「T」だけ記載した。また、オレンジ枠の紙にも「Seen from a distance, it looks like ____.」と記載して、英語・アルファベットが関係していることを暗に示した(正直、これは入れない方がいいかもとずっと思っていたが、チャーリーとNOZがどれくらい注目するか見てみたかったのでそのままにした)。これがどうなったかは本編 を観るとわかります。。

いわゆる「分詞構文」で有名な形。
「Seen」は過去分詞。
「When it is seen from a distance, it looks ...」が分詞構文となって「Being seen from a distance, it looks ...」となり、Beingが省略されて「Seen from a distance, it looks ...」となっている。
翻訳するときは「距離をとってみられると」ではなく「距離をとってみると」とするのが良いということになっている。
今回の場合、「Seen from a distance, 」と 「it looks like ____.」が離れた場所に書かれていたが、ここで「Seen」が分詞構文であることに気づくと、「Seen from a distance, 」「it looks like ____.」でひとつながりの文章であることがわかり、「遠くから見ると何かに見えるんだ!」という推測が出来る、というめちゃくちゃ回りくどいヒント。

カタカナ語辞典については、エイプリルフール(の説明でPOISSONを入れること)カヌレカフェオレが最低限入っていれば良いのだが、自然にカタカナ語辞典に並べるために「イ~キ」までの辞典とした。そして指示文に使えるような「イ~キ」の単語(キュレーション、ウェブサイト、オポチュニティ)を入れてかさましした。

また、このカタカナ語辞典は絶対に目を通す必要があると認識させるために、「O」を入れた。また、「O」の近くに二次元コードを配置した。気づきやすくするためだ。また、その間にエイプリルフールを挟んだ。なにがなんでもpoisson d’avril(四月の魚)に注目させるためだ。あとは、実物として出ていたカヌレの文字を大きくして若干の違和感を演出した。エイプリルフールもなぜか文字が大きいね、と違和感を持ってもらえることを期待して。
そして文字サイズの大きいカヌレのとなりにカフェオレを配置した。ここは悩んだところ。さすがに隣にカから始まりレで終わるものを並べてしまうのはいかがなものか、とも考えたがそのままでいくことにした。

ここで、カフェオレとカフェラテの定義がけっこう曖昧であることに悩んだのはまた別のお話。ドリップコーヒーにミルクを入れたものが本当のカフェオレだ!、とか、そもそもフランスやイタリアではコーヒーは温かいものであって、冷たいものはそもそも一般的では無い!、とか。そうなるとペットボトルの冷たいコーヒーと冷たいミルクでつくったのはカフェオレとはいえないのでは!?、とか、そもそもペットボトルのコーヒーは、ドリップコーヒーといえるのか!?、とか。じゃあ、メーカー各社はカフェオレとかカフェラテはどう作ったものを出してるのよ!?、とか、えっ!?各メーカーで定義が違うじゃねぇか!、とか。じゃあ、食品表示法での名称は何と書いてあるんじゃ!?、とか、しかも牛乳が入ってるからめちゃめちゃ区分いろいろあるんじゃねぇか!?(より具体的にいうと、食品表示基準の「別表第3」の定義に合わない食品に「別表第5」の名称を使おうとしていないか、「別表第4」に掲げられた食品に該当するか・該当する場合その内容に従っているか、「乳等省令第2条」の定義に従った表示をしているか)、とか。悩みは尽きません。
最終的に、この謎解きの範疇においては「このカタカナ語辞典で定義している」という建付けにしている。あと、poissonも魚肉とか調理した魚という意味も含むとか含まないとか。。言葉の定義はいつも悩みのタネです。。

解いてもらった!

この記事の冒頭にあるように、チャーリーとNOZに解いてもらいました!(本編 )

印象的なシーンをまとめました。

お菓子が出てきたときの「食べていいの!?」、「カヌレ食っちゃっていいの?」という期待通りのお言葉。「カヌレ割ったら、何か出てくるんじゃない?」という予想外のお言葉。「ねぇねぇ、カフェオレ作る?」、「これ(コーヒー☕)、開けちゃう?」という飛躍した鋭いお言葉。最初の問題で「新幹線」の絵文字🚅を出していて、電車🚃の路線名が出てきて、最後にフランス国鉄が出てくるというユニークな展開。
とても楽しい「朝食🍴」でした!

「STRIPE」(ストライプ、しま模様)という答えの導出のさせ方が良くなかったな、と思った(謎自体も賛否両論かもしれないが)。
「STRIPE」を導く最中で、「STRIP」という想定外の単語が出てくる可能性が大いにある。別に「STRIP」が悪いというワケではないが。

ちなみに、ラス謎の別解帽子🧢、、、別解防止のために、ルール③解説終了まで誰かに触れるのは禁止が入っている。最後の答えを当てようとするときに、実力行使で妨害するという別解があるためだ。
しかしながら、ふかちゃんが敵側だったことが後で明らかになる。じつはルールのピンク色のマークの上に文字を重ねて、ふかちゃんがルールを偽装していたという設定である。ピンク色のマークの端をよく見ると、裏にあった文字がちょっと見える。見えないか。。
となると、ルール③は本当は無かったことが事実なので、ふかちゃんが最後の答えを当てようとしているときに、実力行使で妨害するという別解はじつはアリの行動なのだ。そんなことは起きなかったけどね?

終わりに

謎解きのプレイ動画を投稿する予定だったので、むしろ予想外の行動を取ってしまったというパターンでも全然OKだった。
たとえば、謎解きをしながらカヌレとミルク・コーヒーをすべて食べて飲んでしまうとか、二次元コードを読み取る必要が出てくるということはスマートフォンを使用してよいということなのでPOISSONをウェブ検索しちゃうとか、ふかちゃんが最後の答えを当てようとするときに実力行使で妨害するとか。何が起きても良いのだ。それが謎解きの楽しみなのだから。

参照

【nozfont】
 協力 フォントワークス株式会社
 Special Thanks: Fontworks Inc.

「新幹線」は東海旅客鉄道株式会社の登録商標です。商標登録第3028506号

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このページの 著者 ライター カヌレ大好きライター 悠久のライター
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謎解きとゲーム大好き。
日々、CEOからお願いされたことを実装し続ける。その先に、悠久のひとときがあることを信じて。

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