はじめに
この記事ではこちらの謎解きを実装するまでを、制作者の目線で振り返ります。なお、「私の謎解きの作り方」であるため、他の制作者様も同じであるとは限りません。一人ひとり、考え方は違うものです。 なお、ここは『「宇宙船緊急帰還」謎』のネタバレ全開です。実際にプレイしてみたい方は、こちらからどうぞ。
解いてみた動画
チャーリーとNOZが挑戦した動画はこちら!
やりたかったこと
表現が制限された状態で、相手になにか伝えることができるのか知りたかった。
制作の方針
次に制限=絶対に厳守すること を列挙します。
制限①:1時間以内で出来ること
制限②:スタッフは私のみ
ここでアップデートします(このことを、制限をより深く、新規に設定することから「シン制限」と勝手に私は言っています)。シン制限は、前提条件と制限にスタッフの特長(趣味/特技)を加味して、具体的に設定します。
前提条件:クリア(成功)してほしい。 + 制限①:1時間以内で出来ること
⇒シン制限①:制限時間を991秒に設定し、謎解きは限りなく少なくする。
前提条件:クリア(成功)してほしい。 + 制限②:スタッフは私のみ
⇒シン制限②:チェッカー(チェックポイントで回答が合っているか確認する役割を持つ人物)は無し。ウェブサイトでのパスコード入力をしてもらって、ゲーム進行を自動化する。ただし入力は簡単なものにする。
まとめると、
シン制限①:制限時間を991秒に設定し、謎解きは限りなく少なくする。
シン制限②:チェッカーは無し。ウェブサイトでのパスコード入力をしてもらって、ゲーム進行を自動化する。ただし入力は簡単なものにする。
謎解きの制作
「シン制限」の範囲内で、謎解きのストーリーを考えます。ここは思いつきです。
大枠 ―思いつきの書き出し
前回の謎解き では、食いしん坊な2人のために食べ物・飲み物を用意しておいたのだが、ゲーム前にお酒を飲みまくっていた。その結果、べろべろに酔っぱらってしまい、謎解きはボロボロだった。なので、今回は宴会を始める前に謎解きをしよう!
大枠を具体化する
今までの謎解きでは制限時間(991秒間)を設定してきたのだが、チャーリーもNOZも時間をほとんど気にしている様子がなかった。これはもはや991秒が長すぎたのかもしれない。それならば、各STEPで制限時間を設定してしまおう。そうすれば時間を気にしてくれるかもしれない。
数字をずっと見つめていると、いや、正確にくっきりとした姿が見えてるワケではないけれど、おぼろげながら浮かんできたんです。389という数字が。シルエットが浮かんできたんです。ひらがなにすると「さんはちきゅう」。「サンは地球」。太陽は地球か!? ということで、ラス謎は「389」という数字から「地球はどれ?」と聞いて「太陽を選択させる」ということにしようかな。
となると、設定は宇宙かな。宇宙船の中でなにかしらのエラーが発生。地球に緊急帰還しなくてはならなくなった。だが、緊急脱出マニュアルが難しすぎる、みたいな。んじゃ、STEP1は星の謎解き(太陽と地球は絶対使う)を出す。ここでできれば389も一度触れておきたい。STEP2は雰囲気で。STEP3(ラス謎)は「389」から「サン(太陽)は地球」であることを導くこと。
具現化 ―小謎~ギミックの作成
まずは300秒カウントダウンタイマーをつくろう。BGMは無いが、切羽詰まった感を出すために1秒ごとに効果音がなるようにした。さらに残り60秒からはピッチを上げてさらに切羽詰まる感を出した。みんなも使ってね!
ついでに991秒版もつくったよ!
チェッカーが人力(じんりき)では無理なので、入力フォーム(正誤判定フォーム)を用意しよう。「ティーポッド式」で日本語にも対応させようか。
ではSTEP1。星を登場させようか。ここでそれぞれの星の読み方を提示しよう。で、星の読み方を使って謎解きをつくろう。
絵文字の著作権ってどこが保有しているのか?
絵文字は、Unicode(ユニコード)で決まっている文字コードを入れると、表示されるのだが、じつはベンダー(Google, Microsoft, Apple, Twitter, ...)ごとに、出力される絵文字のデザインは違う。
今回の場合はMicrosoftのものを使用している。
絵文字を使用する場合は、各ベンダーのルールに従おう。
ちなみにAppleは厳しい。
何も気にしたくなければ、みんな、絵を描こうということだ。
と思ったけど、最近は生成AI(ジェネレーティブAI)があるので、そちらでも良いかもしれない。
ついでに、ここで「389」を出そう。STEP1は「非常用電源を入れろ」。非常用電源を起動するにはパスワード(数字3桁)が必要。パスワードを確認するためにはモニターを表示させる必要がある。となると、入力できるものとモニターの2つを用意しなければ。今回は宇宙船のなかという設定なので、自分のスマートフォンは使用できないこととして、タッチ式・数字入力可能なもの(ノートパソコンとかタブレット端末とか)とモニターにしよか。
でもこれだと「389」が唐突すぎないかなー。もう少しこの数字を印象付けたい。ということで、宇宙船の中(パスワードを入力する側)と外(パスワードを伝達する側)の二手に分かれてもらおう。というか、二手に分かれるのって面白そう。
謎解きを非対称でやってみよう。、一方は「太陽は地球」という情報から「389」という数字をひらめかなければならない。もう一方は「389」という情報から「太陽は地球」ということをひらめかなければならない。これをラス謎にしよう。宇宙船の外に最後の情報が現れる。それを見るためには宇宙船の外に出なければならない。そして戻ってこれない。ただし数字3桁のみ伝達することができる。そして宇宙船の中では伝達された数字3桁から「太陽は地球」であると読み取り、「太陽」を押せば地球に帰還できる。
となると、宇宙船の外に出たとき、300秒間は戻れないという設定にしようか。これにより、宇宙船の外に出て、情報だけ見て宇宙船内に戻ってくるというルートをつぶせる。となるとSTEP3(ラス謎)の制限時間は300秒。自動的に、STEP1も制限時間は300秒。で、STEP2は、できればSTEP3までに残り300秒未満になってほしい。謎解き全体の制限時間を991秒にして、STEP1(300秒固定)→STEP2とSTEP3(691秒、ただしSTEP3は300秒未満となることが望ましい)にしよう。
「パネルの一部が壊れている」という設定にすれば、なんやかんやできるかな。地球がタップできないから、代わりに太陽をタップしなければならない、としよう。少し意地悪して、太陽が見つけにくくしようか。「太陽から離れている星の順番」と「星の大きさ」を実際にそろえて表示しよう。
STEP1とSTEP3が先にできてしまった。STEP2はどうしようかな。でも、「太陽から離れている星の順番」と「星の大きさ」は出さなければ。でもなにかしらアイテムを使いたいなー。
宇宙。宇宙は無限に広がるとかなんとか。無限といえば無限キューブ!? インフィニティキューブ(Infinity cube)。んじゃ、これ作ろう。経費削減で折り紙で作ろうかな。
立方体
「無限キューブ」って、よくよく考えると珍しい名前。
「商標登録」されているかの確認をしてみたら、「無限キューブ」は商標登録されていなかった。今回は制作物となるため「特許登録」も調べてみたが、調査した限りでは日本国内にはなかった。
(個人的には、なにか気になったワードがあったとき、商標登録の区分は「第9類」「第35類」「第41類」「第42類」を調べている)
難易度の設定
今回の謎解きの流れとしては下記の通り。
① STEP1;制限時間300秒:モニターの表示 ~ パスワード入力
② STEP2;制限時間691秒: アイテムを使った謎(必要な情報の提示)
③ STEP3;制限時間はSTEP2の残り:二手に分かれて、非対称の謎解き
今回は”成功してほしい”ので、謎解きは3問のみとした。STEP3(ラス謎)とSTEP1の関連性を高くしたつもりだけど、実際はどうなったでしょうか。。。
STEP1は制限時間300秒だったのですが、なんと120秒以上残してクリアしました!NOZが解き方をヒラメキ、チャーリーが文字を抜き出す。。。はずが、NOZが横入りして文字を抜き出す。いつもの楽しい時間でした!
STEP2からは制限時間691秒。STEP2は391秒以上使ってほしかったのだが、結果として584秒でクリアしました。ひらめくNOZとメモするチャーリー。そしてモニターにあるものを書き写すチャーリー。こちらもいつもの時間でした!
なんと、NOZがモニターに隠れた「UQ」を発見!なんとなーく、そうみえるように書いたのですが、気づいていただけるとは思っていませんでした。スゴイね!
STEP3では残り107秒。宇宙船の外に出ることにしたのはNOZ。やっぱり、NOZは頼りになりますね!そしてチャーリーは動かない。太陽は動かない。